まず、同盟には階級がある
同盟の話をする前に、少し構造を説明しておく。
キングショットの同盟には、R1からR5まで階級がある。R5が同盟のトップ、いわゆるマスター。R4が幹部。R3以下は、ログイン頻度や戦力によって分けている同盟が多い。
R5とR4には、一般メンバーにはない権限がある。メンバーの承認、役職の変更、同盟の方針決定。そういった申請や決裁がR4・R5にしかできない仕組みになっている。
これだけ聞くと、完全に会社の組織図だ。社長がいて、部長・マネージャーがいて、一般社員がいる。ゲームなのに、階層構造がちゃんとある。
そしてここも現実社会と似ているのだが、R4に誘われても断る人がいる。
仕切る役割が増える。連絡や調整が増える。イベントのたびに動かないといけない。それが面倒で、「自分はR4向きじゃない」と断る人がいる。現実社会でも、マネージャーになりたくない人が増えているという話をたまに聞く。責任は増えるのに、見返りが割に合わないという感覚。それと構造がまったく同じだった。
R4を経験して疲れて、一般メンバーに戻る人もいる。私もその一人だ。マネージャーには向いていないということが、ゲームで発覚した。
ゲームなのに、役割が生まれる
ゲーム内の役職とは別に、空気の中でなんとなく役割みたいなものが生まれてくる。
イベントのたびに声をかけてくれる人がいる。説明が得意な人がいる。何も言わないけど必ず参加している人がいる。場の空気が重くなったときに、違う話を振って空気を変えてくれる人がいる。後輩メンバーの面倒をよく見ている人がいる。強くはないけど、毎回リアクションをくれる人がいる。
会社でいうと、ムードメーカー、無言で仕事が早い人、面倒見がいい先輩、実務担当、みたいな感じに近い。
給料は出ない。評価制度もない。人事異動もない。それなのに、人はなんとなく自分の立ち位置を見つけて、その役割で動いてしまう。
最初にそれに気づいたとき、少し笑ってしまった。ゲームなのに、なんで会社みたいになってるんだろう、と思って。
遊ぶ場のはずなのに、なんでここでも会社みたいな感覚でいないといけないんや、、と思うこともあった。でも、だんだんそういうもんだと理解するようになった。人が集まって、階級ができて、やるべきことが生まれたら、自然と会社みたいになっていく。このサイトのテーマである「小さな社会」そのままだ。
ゲームの中まで会社っぽい、という感想は、いつのまにか「面白いなこれ」に変わっていた。
イベントが始まると、仕事っぽくなる
普段の同盟は、わりとのんびりしている。チャットでしょうもない話が流れて、各自がデイリータスクをこなして、それぞれのペースで動いている。
でも、大きなイベントが始まると、空気が変わる。
「今日参加できる人いますか?」という声かけが来る。参加時間の調整が始まる。誰がどこを担当するか、みたいな話になる。チャットが急に連絡ツールっぽくなる。
アンケート機能というものがあって、事前に参加率を調べることもできる。その結果が芳しくないと、幹部専用のグループチャットで「どうしようか」と相談が始まる。
これ、普通に仕事だ、と思った瞬間が何度かあった。
連絡、調整、確認、フォロー。会社でやっていることと構造が同じだ。ただし、強制力がない。来なくても怒られない。評価も下がらない。でも、なんとなく気になる。
その「なんとなく気になる」の正体が、この記事で書きたいことに近い。
管理しすぎると、ゲームじゃなくなる
マスターや幹部は、なかなか難しい立場だと思う。
ゆるすぎると、イベントに人が集まらない。連絡しても反応がない。気づくと同盟が形だけになっていく。かといって、管理しすぎると今度は空気が重くなる。
「必ず参加してください」「報告をお願いします」「活動していない方は除名します」。
こういう文言がチャットに流れると、一気にゲームじゃない感じになる。義務が発生して、ログインが作業になって、楽しくなくなる。そうなると人が離れる。
だから「管理しすぎないけど、放置もしない」という、かなり微妙なバランスが必要になる。リアル社会と同じで、ハラスメントと思われない柔らかい言い方で、でもちゃんと伝える。これがまさに腕の見せ所で、向き不向きがはっきり出る。
給料も出ないゲームの幹部が、似たようなことを考えているのが、なんか妙に面白かった。
そしてこういう場面を見ていると、この人はリアル社会でもこういうふうに立ち回る人なんだろうな、と勝手に想像を膨らませて楽しんでいた。顔も本名も知らないのに、ゲームの中の動き方で、その人のリアルの一面がなんとなく透けて見える。
余談だが、ハラスメント研修やビジネスコミュニケーション研修の知識が、まさかキングショットの幹部業務で役立つとは思っていなかった。研修担当の人に教えてあげたいな。
言い方と、普段の関係性が全部だった
強制力がない場所では、言い方と信頼関係がほぼ全部になる。
同じ「参加お願いします」でも、普段から一緒に動いている人が言うのと、ほとんど関わりのない人が言うのでは、受け取り方がまったく違う。
普段チャットで話していた人からの声かけは、なんとなく応えたくなる。いつも援軍を送ってくれた人の集結には、なんとなく参加したくなる。逆に、命令口調で書かれた連絡には、ゲームなのに萎える。
そしてテキストだけのやりとりなのに、カリスマみたいな人が生まれるのも面白かった。文章が面白い人、タイミングよく的を射たことを言う人、戦局をひっくり返す立ち回りができる人。そういう人がログインするだけで、チャットが少し盛り上がる。
さらに面白いのが、カリスマが数人いると、それぞれに推しができることだ。「私はこの人が好き」「自分はあの人派」みたいな空気が生まれて、同盟の中にゆるくグループができたりする。アイドルグループの推し活と構造が同じだな、と思って一人で笑っていた。
課金ゲームなので、正直なところお金をたくさん使っている人がカリスマになりやすい面はある。強さがそのまま影響力につながる。これは少し虚しい構造だけど、その分お金を使っているんだから、それくらい気持ちよくなってもいいとも思う。ちなみに私はほぼ課金していない側で、カリスマでも何でもないです。
同盟は、会社より逃げやすい。それだけに普段の積み重ねが、そのまま同盟の空気になる。会社より露骨で、会社より正直だった。

ゲームなのに、組織になっていた
会社っぽい、と書いてきたけど、もちろん本当の会社ではない。
給料はない。評価もない。強制もない。明日突然全員いなくなっても、誰も困らない。……いや、困る人もいるか。
それなのに、人が集まって目標ができると、役割が生まれて、調整が必要になって、空気を読み始めて、誰かが仕切って、誰かがフォローして、気づくと小さな組織みたいになっていた。
そしてキングショットが面白いのは、その組織を構成している人たちの幅がかなり広いことだ。学生、社会人、主婦、定年後の人、おじいちゃんおばあちゃん。会社よりよほど年齢層が広い。海外のプレイヤーもいるから、文化の違いみたいなものも普通に顔を出す。
会社だったら接点がなかったような人たちが、同じ同盟にいて、一緒にイベントをこなしている。プレイヤー同士がコミュニケーションを取りながら動くゲームは、こういうところが面白いんだと、ようやくわかった気がした。
これはキングショットに限った話じゃないと思う。人が複数集まって、共通の目標ができると、自然とそうなっていくんだろう。ゲームはその縮図として、かなりわかりやすい形でそれを見せてくれた。
自分が組織の中でどう動くのか、マネージャー向きなのかプレイヤー向きなのか。それをいろんな年代・いろんな背景の人たちと一緒に経験できる場所として、キングショットはゲームとして以上に、いろいろ見せてくれる場所だった。

