ゲームの中で、なぜ毎日誰かに会いたくなるのか

夕方の住宅街の坂道で、すれ違いざまに軽く手を上げる人たちを描いたイラスト ゲーム観察

毎日、なんとなく開いてしまう

毎日ゲームを開く理由を、最初から正直に言える人はあまりいないと思う。

強くなりたいとか、イベントを攻略したいとか、そういう理由もある。でも実際には、なんとなく開いている日の方が多い。通知が来ていたから。資源が溜まっているから。あるいは、特に理由もなく、気づいたら開いている。

そして気づくと、「今日も誰かいるかな」という感じでチャットを見に行っていた。

最初からそうだったわけじゃない。最初はゲームとして始めて、攻略を調べて、強くなることを考えていた。それがいつのまにか、習慣の中に人の気配を確認する動作が混じっていた。

なぜそうなったのか、少し考えてみた。

ゲームに、心理戦を仕掛けられている

キングショットには、毎日やることがある。

デイリーミッションの消化、資源の回収、訓練の開始と回収、建設の進捗確認。大きなイベントがない日でも、ログインして少し触って、また閉じる、という動きが自然に生まれる。

未処理の項目には赤い通知がアイコンにつくのだが、なんとなく気になる。別に今すぐやらなくていいことでも、放置していると少し引っかかる。いつからこんなに、人類は赤いマルに反応するようになったんだろう。スマホが普及して、LINEやアプリの通知に毎日触れているうちに、赤いものは処理しないといけない、という感覚が染みついてしまったのだと思う。

この強力な人間のくせを最大限に利用しつつ、さらにキングショットの場合、数時間ごとに何かが溜まったり、回収できるものが出たりするように設計されている。6時間くらい経つと「そろそろ何かやらなくちゃ」という感情が無意識下から湧いてくるように感じる。楽なほうに逃げようとする心理、赤いマルを処理しなきゃという謎の染みついた癖。そういう人間のダメな部分に、巧妙に心理戦を仕掛けられ、日々それに負けてログインすることになるのだ。このゲームには名高い心理学者がプロジェクトチームに参加しているのかと思うくらい、リピートしてログインしてもらうことに注力している。

ただ、ログインする強力なきっかけはそこだとしても、開いてまず楽しみにしていることがだんだん変わっていった。

最初はタスクを処理して、資源を回収して、という順番だった。それがいつのまにか、同盟チャットを先に開くようになっていた。自分がいない間に何か流れていないかを見返すのが、だんだん楽しみになっていたからだ。今日はどんなしょうもない話をみんなしてくれてるのかなぁ。それを確認してから、タスクに移る。

夕方になると、人が増えてくる

ゲームとして開く理由があるから、人が集まる。

特に夕方から夜にかけて、チャットの流れが変わる。仕事終わり、学校終わり、夕食後、風呂前、寝る前。それぞれの生活の隙間が、なんとなく同じ時間帯に重なる。さっきまで静かだったチャットに、誰かが「お疲れさまです」と書いて現れる。それをきっかけに、少しずつ動き始める。

自分が何かつぶやくと、誰かが拾ってくれることがある。返事じゃなくて、スタンプひとつだけのこともある。でも、発言しなくても、流れているチャットを読んでいるだけで「人いるな」と感じる。それだけで、なんとなく十分だったりする。

現実の生活を振り返ると、「誰かがなんとなくいる場所」って、意外と少ない。学生なら友達はそれぞれ家に帰っているし、社会人も同じだ。複数人で会おうとすると、予定を合わせる手間が発生する。職場では役割があって気を使う。誰かと同じ場所にいるためには、たいてい何かしらの段取りが要る。

キングショットはデジタルだから、みんながログインするだけで同じ場所に入れる。学生も社会人も、それぞれ家に帰ったあとで、同じ同盟にいる。現実では予定を合わせないと実現しないことが、ゲームにログインするだけで毎日起きている。これは地味にすごいことだと思う。

みんなで熊を殴っていた

王国の広場で、同盟の仲間たちが大きな敵を囲んでイベントのように協力しているイラスト

キングショットには、同盟のメンバー全員で同じ敵を攻撃するイベントがある。

文字にすると「みんなで熊を殴る」という、書いていて少し手が止まる内容なのだが、2日に1回、決めた時間に30分ほど殴り続ける、という定期作業になっていた。参加すると強くなれるアイテムがもらえるので、一応ゲームとしての意味はある。ただ、正直に言うと、まじで単純作業だ。

面倒くさいのは事実なので、作業感が出ないように、みんなで話題を決めて話す時間にしていた。好きな映画、好きな食べ物、旅行で良かった場所、好きな俳優や女優。なんでもよかった。ルールがあるわけじゃなく、熊を殴りながらそういう話をしていた。

これが、意外と盛り上がった。

理由は後から気づいたんだけど、同盟のメンバーは基本的に名前も素性も話さない。だからこそ、こういうテーマで話すときが、その人の好みや趣味が初めてわかる瞬間になる。「そんな映画が好きなんだ」「意外とそういう趣味があったんだ」。それが積み重なると、前の記事で書いた「その人の輪郭が少しずつ出てくる」感覚に、また別の角度からつながっていく気がした。

単純作業なのに人が集まって、話しながら殴り続けている。2日に1回それが起きていた。それはそれで、なんかすごいことだったなと思う。

ゆるいけど、意外と強い

同盟にいると、個人プレイとは少し違う感覚が出てくる。

キングショットには、一つの王国の中に複数の同盟がある。その同盟同士で、イベントの施設や報酬を取り合うことがある。外に競争相手がいると、自然と同盟内の仲間意識が強くなる。私の王国では、全ての同盟が仲良しというわけではなかった。いがみ合いみたいなものもあった。そういう外からの圧力が、同盟内の絆をかえって深めていた気がする。

強い友情とか、熱い絆とか、そういう大げさな言葉は似合わないと思っていたけど、実際には会社のプロジェクトチームより気楽なのに、なぜかそれ以上に仲間意識が生まれることがあった。会社のチームは、役割があって、評価があって、気を使う部分がある。同盟は、自分の意志でやっているゲームだから、強制がない。なのに、一緒に戦う場面が積み重なると、ゆるいというより、意外とちゃんとした絆になっていく。

誰かが援軍を送ってくれたとき。集結に参加してくれたとき。イベントで一緒に動いたとき。特に感謝を言葉にするでもなく、でも確かに一緒にやっている感じがある。

関わりたいときだけ関われる、強制もない、でも同じ場所で同じ敵と戦っている。その組み合わせが、ゆるいけど強い、という少し変な仲間意識を作っていた。

ゲームを開く理由が、少し変わっていた

最初にキングショットを始めたとき、ゲームを開く理由はゲーム内のことだった。資源を集めたい。強くなりたい。イベントを進めたい。

それがいつのまにか、少し変わっていた。

タスクをこなしながら、チャットを見る。誰かが何か言っていれば読む。夕方になってチャットが動き始めると、なんとなく自分も何か言いたくなる。熊イベントがあれば、作業しながら誰かと話す。

気づくと、ゲームを開くことが「作業をしに行く」というより「今日も誰かいるかな」と確認しに行く感じになっていた。

ゲーム側に毎日戻ってくる仕組みがあって、それで人が集まって、人が集まるから会話が生まれて、会話があるからまた来たくなる。その循環が、静かに続いていた。

リピートさせる設計が強いゲームなのは間違いない。でも、デイリータスクをこなすだけで無言で去っていく人もいれば、その先で人と話すようになる人もいる。自分はどちらかというと後者だった。ログインする理由はゲームが用意してくれたけど、続ける理由は人との関わりの方に移っていた。それがこのゲームの、思っていたより深いところだと思う。

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